「やんばる」の自然を守るために
近年世界的に環境問題についての意識がますます高まり、自然環境保護の重要性が注目されています。
その中で、すぐれた自然環境を守り、後世に伝えていくことを目的に国が管理・保護する「国立公園」の役割もさらに大きくなっています。
沖縄島北部は「やんばる」と呼ばれ、国内最大級の照葉樹林が広がり、固有の動植物が豊富に存在する世界的にも貴重な自然の宝庫です。
大石林山は自然公園法(1957年 法律161号)に基づき「沖縄海岸国定公園」に指定されており、すぐれた自然の風景地を保護、また国民の保健・休養・教化に資することを目的に管理運営を行ってきました。
2016年9月15日には「やんばる国立公園」が指定されました。既に沖縄海岸国定公園に指定されていた地域の一部は本国立公園に編入されました。大石林山はこの特別地区内にあります。
大石林山では、地学、動物、植物の各分野専門家による継続的な調査ならびに自然環境の保全に取り組んでいます。
また、専門ガイドによるガイドツアーでは「やんばる」の自然の価値を伝え、自然環境保全への関心や理解を高められるよう努めています。
かけがえのない「やんばる」の自然を守り将来の世代に引き継いでいくために、大石林山も国立公園として自然の保護と適正な利用増進に努めてまいります。
やんばる国立公園について
<公園の特徴>
やんばる国立公園は、沖縄島北部に位置し、2016年9月15日に33番目の国立公園として指定されました。国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、琉球列島の形成過程を反映して形成された島々の地史を背景に、ヤンバルクイナなど多種多様な固有動植物及び希少動植物が生息・生育し、石灰岩の海食崖やカルスト地形、マングローブ林など多様な自然環境を有しています。また、このような自然環境の中での日々の暮らしで育まれてきた伝統的なやんばるらしさが息づく人文景観が特長です。やんばる国立公園では、このような亜熱帯の大自然を舞台に、景勝地めぐり、トレッキング、カヌー、アニマルウォッチング、ドライブなどのレジャーが盛んに行われており、訪れる公園利用者へ良質な自然とのふれあいの場・機会を提供しています。
・指定:2016年9月15日
・面積(陸域のみ):17,331ha
・国立公園とは
日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限するとともに、風景の観賞などの自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところであり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園です。次の世代も、私たちと同じ感動を味わい楽しむことができるように、すぐれた自然を守り、後世に伝えていくことを目的としています。
<地形・景観>
「やんばる(山原)」とは、「山々が連なり森の広がる地域」を意味する言葉で、亜熱帯照葉樹林の森が広がっている沖縄島北部を指しています。特に、国頭村、大宜味村、東村を中心とする一帯はノグチゲラやヤンバルクイナをはじめとする多くの固有種が生息し、生物学的にまとまりのある森林が比較的健全な状態で残っています。
生物多様性
やんばる地域には、わずかな面積の中にたくさんの種類の生き物が生息しています。実に多様でユニークなたくさんの種類の生き物たちが、互いに密接につながりあいながら複雑な生態系を作りあげています。国頭村、大宜味村、東村は、日本全体の0.1%にも満たない狭い面積しかありませんが、日本全体で確認されている生物の種数に対して、鳥類では約半分、在来のカエルのうち約1/4の種類が確認されるなど、高い割合を占める動植物の種が生息・生育しています。
生物多様性
亜熱帯照葉樹林
やんばる地域は北緯27度付近に位置します。世界の同緯度の亜熱帯地域では砂漠や乾燥地帯などが多く、森林がある地域はやんばるを含めごくわずかです。琉球列島は赤道直下から流れてくる黒潮と、梅雨前線や台風により暖かく雨の多い亜熱帯海洋性の気候となっています(年間降雨量約2,500mm)。この気象環境がやんばるの豊かな森を作り、その森が多くの生物を育んできました。
やんばる地域における森林率は80%以上で、最も広い面積を占めている自然植生は、スダジイやオキナワウラジロガシなどのブナ科植物で代表される亜熱帯常緑広葉樹林です。
亜熱帯照葉樹林
島の成り立ち
琉球列島は新生代の第三紀(約2,300万年から170万年前)以降の激しい地殻変動により、大陸や日本本土と陸続きになったり離れたりを繰り返してきました。その時々に様々な生き物たちが琉球列島に渡ってきました。そして島々に閉じ込められた生き物たちは、何万年もの長い年月をかけ、島ごとに固有の種へと進化していきました。
<動植物>
やんばる地域にはヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ケナガネズミ、オキナワトゲネズミ、オキナワイシカワガエル、ヤンバルテナガコガネなどの固有種が生息しています。一部高標高地では雲霧林が発達し、着生のシダ植物やオキナワセッコクなどのラン科植物が生育します。河川上流から中流の渓流沿いには、熱帯・亜熱帯に特徴的な渓流植物が分布し、さらにやんばる地域に固有な両生類の産卵・生息環境にもなっています。
スダジイやオキナワウラジロガシなどの広葉樹は生長して大径化が進むと幹に空洞ができ、さらに年月を経ると樹洞ができます。ノグチゲラやケナガネズミ、ヤンバルテナガコガネ等はこれらの環境を利用し、大径木が多く生育する森林に依存しています。
・大石林山で見られる植物と生きもの
サクララン
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ショウキズイセン
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イルカンダ
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カジノキ
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オオムラサキシキブ
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オオバギ種
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ゲットウ
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クロツグ
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ツワブキ
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御願ガジュマル |
ソテツ
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ソテツの花(雄)
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ソテツの花(雌)
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ツマグロヒョウモン |
オキナワキノボリトカゲ |
ホントウアカヒゲ |
オオシマゼミ |
リュウキュウイノシシ |
シュリケマイマイ |
バーバートカゲ |
<文化>
琉球王府時代から近年まで、やんばる地域は薪炭や都城の建設・船などの用材となる林産物の生産・供給の場として重要な役割を果たしてきました。昭和に入るまでは海上輸送が主流で、沖縄島中南部との間で「山原(やんばる)船(せん)」による交易が盛んに行われました。国頭地域から首里王府へ重い材木を多人数で運ぶ時の歌は、クンジャンサバクイ(国頭木遣音頭)として伝えられています。山で薪炭や琉球藍づくりなどの生業が営まれていた名残として、現在も各所に、炭窯や藍つぼの跡が残っています。
海と山に囲まれたやんばる地域の集落では、海と山を一体として捉え、一つの空間から自然の恵みを受けているという空間認識が見られます。それを特徴づけるのが祭祀で、集落の邪気を払い豊作・豊漁を祈願するシヌグや海神(ウンジャミ・ウンガミ)祭などはこれを象徴的に表しており、集落の伝統として受け継がれています。
・大石林山で見られる人々の生活跡と思われる石造物
家畜小屋跡
猪垣
※「やんばる国立公園について」
出典:環境省ホームページより
https://www.env.go.jp/park/yambaru/point/index.html